ヘブンリー・ブルーY
著者:HOCT2001


 昼間あれだけ寝たのだから、睡魔が襲ってこない。代わりに、鼓動がするたびに体の随所が痛む。あたりまえだ、俺は死にかけていたのだから。
それでも眠らないと明日にひびく。どうにか眠ろうとして眠る体性を色々と変えてみたのだが眠れない。こうなりゃ、伯父さん秘蔵の焼酎でも飲むか。
と、言うわけで台所へおりてみる。たしか、伯父さんはここに隠しておいてあった気が…
ん、あった。よし一気に飲んで眠ろう。伯父さんも寝ているしな、見つからないように慎重に。
よし、呑んだ。眠ろう。

 次の日…
朝日を拝む前に起きてしまった。いわゆるランナーズハイというのか疲れたあとは、気分が高揚してしまうらしい。朝飯までやることがないじゃないか。
しかし昨日が昨日だっただけにサーフィンをやる気がおこらない。二度寝しようにも身体は完全に覚醒している。こうなったら漫画でも読むしかないか。

 
 俺が、5冊目の漫画を読んでいるときに、伯父さんは起きてキッチンへ入っていった。においからするに、ベーコンエッグと、サラダの朝飯らしい。
なんともそつがない朝飯だ。まぁ、食べられるものだったら何でも食うが。
食は文化だなんてえらそうなことを言っている人がいるが食べられるものだったら食べないとろくに食事を取れない人に失礼じゃないか、なんて考えてみる。
そんなことを考えているうちに朝飯ができた。
それを一気に胃の中へ流し込むと、

「伯父さん、学校へ行って来るわ」

 と言い残して学校へ向かった。伯父さんの家から学校までは、ひとつかなり急な坂がある。そこを上っている途中、俺のバカ友人その2『桜井』に出会った。

「よう、泉。昨日死にかけたんだって?」
「まぁ、死に掛けてはいたが、今はごらんのとおりぴんぴんしてる」
「それならよかったじゃねぇか」
「でも、それでもお前のバカ面朝からみていると死んでもいいかと思ってるわ」
「それはあんまりだな。心配している友人をその扱いとはな」

 俺は苦笑してこういった。

「心配してくれるのはありがたい。だが心配してくれるのが女の子だとベターだ」

 桜井も苦笑して、

「そうですか。ごめんよ」

 といった。

 それからは桜井とバカをやりながら学校へ向かった。無論、その過程を女子に見られたら総スカンだろうな、と思いつつ。
学校に着くと同時に桜井は、

「この靴箱どうにかなんねーかなー。どこにおいても自由って、いつかきっと自分の靴がなくなる日がやってくるが時くるぜ」
「それはお前がいじめにあっている証拠になると思うんだがな」


 そういってみたものの桜井がいじめにあう確率は皆無に近い。多少(?)エロいところはあっても誰隔たりなく接する桜井はクラス中からもかなり好感度が高い。
こいつがクラス委員長になってもいいかと思うほどだ。でもまぁ、仕事サボりっぱなしだとは思うがな。

「んじゃ、次の大会の技の組み合わせを考えるからちょっと図書館へ言ってくる」

 といって、桜井と別れた。今度の大会では無様な結果は許されない。もちろんプロへの登竜門といったところもあるが、女の子が二人も応援しに来てくれるんだ。
最低ラインが表彰台だ。それ以外は許されない。そのためには自分のできる演技を最高の組み合わせで行わなければならない。向風(オフセット)でも、最高の演技をするんだ!!

 と、色々と妄想にふけっていると、あそこで寝ている娘…小森さん?
なぜこんな場所に、と思った瞬間これは愚問だなと自分に言い聞かせる。彼女は文芸部所属だ。当然、図書館にいても何の不思議もない。不思議はないのだが…
どうして寝てる!!そんなに早朝ではないと思うのだが。ときどきみせる、ピクッ、とかガタ、とかいう動きは、授業中に寝ている人が見せるそれと同じなんだが。
まぁ、起こすのはかわいそうだ、俺は図書館をあとにしよう。

 一時間目、古文〜。というわけで、寝る。奈良時代や平安時代の頃の本の現代語訳なんてつまらなすぎる。
こんなのを楽しみにしているやつがいたとすればどこかおかしいぜ。
で、熟睡しているところに邪魔が入る。

「泉君、眠たいのは仕方ないけど先生に見つかったら大変だよ」

 日生さんだった。結構さばさばしていてこういうものには無頓着かと思っていたが、そうでもないらしい。

「ふぁーーーぉ。起こしてくれてありがと」
「古文の先生はだらしない生徒には厳しいよ。絶対気をつけてね」
「ありがと」

 こうして俺は、何の興味もない授業を受ける羽目になった。
それにしても『源氏物語』を教材に使うなんて文部科学省はいっちゃてるな。
一人の男が多数の女を次々とモノにしていくあげく、最終的に幼女を自分の好みの女に仕立て上げようとするんだぜ。
大丈夫か?日本の教育。まぁ、俺がどうこう言う立場ではないが。ちなみに、これが世界最古の長編小説だったりする。日本よ、ホントに大丈夫か?
ま、そんなこと考えてもしょうがないか。

 講義が終わったあと、日生さんにそれとなーくお礼を言ったのは内緒だ。あ、そういえば日生さんと、小森さんに大会の日時を伝えてないな。
よし、伝えておこう。

「小森さーん、次の大会、湘南で次の日曜日に2時開始だから」
「うん、わかったよ。楓にも伝えておくね」
「それはありがたい、ぜひ、俺の演技を見てよ、びっくりすると思うから」
「うん、頑張ってね」
「まぁ、プロへの登竜門だから一切手加減なしさ、そっちこそ俺の演技に見ほれてよ」
「それは本番、ということでね」

 そう会話して小森さんとは別れた。が、飯田のやつに捕まった。

「青春しているなぁ、和樹」
「じゃぁ、お前も青春しろよ。朝の交差点でトーストくわえた女子生徒と交差点でぶつかるってやつ」
「まぁ、おれもそういうやつに期待しているんだがなぁ、実際にはないだろ?」
「じゃぁ、自分を磨けて話になるな」
「磨いたら、このエロエロになった」
「まぁ、どうにかしろよ」

 と、言って部屋をあとにした。あいつもあのエロ魂をのぞけばそれなりにもてると思うんだがな。まぁ、それが言わぬが華、増長させてもどうこうなるわけないし。
さて、帰る前にサーフボードにのりたい気持ちはあるのだが、それは封印しておこう。昨日の今日だけにな。



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